OSSに想いを寄せて

日頃より、オープンソースソフトウェア協会の活動をご支援下さいまして大変ありがとうございます。

オープンソースの歴史を紐解けば、リチャード・ストールマンがソフトウェアの「4つの自由」を掲げてフリー・ソフトウェア・ファウンデーション(FSF)を設立したのが1985年、エリック・レイモンドとブルース・ペレンズが中心となりオープンソース・ソフトウェア・イニシアチブ(OSI)が設立されオープンソースの定義が公表されたのが1998年でした。これは10項目からなるので、「オープンソースの10原則」とも言われています。ちなみに、当協会は2004年の創立です。

「4つの自由」は、そのひとつの側面として、コンピュータの力を自分たちの手に取り戻したいという気持ちが働いていたものと言えるでしょう。コンピュータが広まり始めた早い時期に、コンピュータのまぢかにいた人たちがコンピュータの力を制御できなくなる恐れを感じたことで、ソフトウェアの開発や流通に、これまでになかった考え方が必要だとの想いがたかまり、「4つの自由」として表明されたものと捉えることができます。

「オープンソースの10原則」は、その後のIT技術の高度化とインターネットの発展・普及の中で、複雑化し相互の関係が見通しにくくなったソフトウェア開発のあり方が問い直される中、「4つの自由」の帰結のひとつであるソースコードの公開を重要な要素とした整理にたどり着いたものと言えます。

これらの流れを特徴づけている、ソースコードを公開するという考え方は、実は1985年や1998年がその始まりなのではなく、たとえば、機械学習に不可欠なBLASライブラリなどを含むNetlibは、以前からパブリック・ドメインであったり、IETFでは Running Code を重視し複数の検証可能な実装を求めていたり、現在のIT技術を支えている部分で、ソースコードの共有が前提となっていました。商用・非商用を含め、様々なソフトウェア開発の現場において、ソースコードを公開するという考え方は、今日において必ずしも多数派ではありませんが、十分に、選択肢の一つとして存在し続けてきたと言えます。

さて、21世紀も1/5が過ぎ、東日本大震災や度々の風水害、今回のコロナ禍など、幾度となく社会が危機に遭う中、無線通信を取り込んだ常に何処からでも利用できる基盤としてのソフトウェアの役割が急激に高まっています。そのため、これら危機の中で顕在化する社会課題に向き合う人々が、ソフトウェアの力を課題解決に活かそうと、熱意を注いています。NPO/NGOや、さまざまな形態の団体や個人がソフトウェアの開発に取り組み、東日本大震災の際の情報共有基盤や、コロナ禍での自治体からの情報提供サイトなど、広く一般市民の目に触れるようになったサービスも少なくありません。

これら、社会課題解決にソフトウェアの力を活かそうとする取り組みでも、実は、ソースコードの公開、つまりオープンソースの考え方に共感し、それを実践する人々がいるようです。社会課題解決を進めるためには、ツールとしてのソフトウェアをより早く開発し、質を高めていかなければならず、また、それらの成果は多くの現場に適用できなければならない、との考え方から、ソースコードを公開し、開発コミュニティの形成を目指しています。

このように、当協会が掲げるオープンソースという理念は、時を経る中で様々な想いが込められ、成長してきたと言えるでしょう。今後は、コロナ禍以降、これまでとは異なる厳しさのある社会が待っているかもしれません。その中で、ソフトウェアの力を自分たちのために活かしていく道として、オープンソースの理念を皆さんにお伝えし、共有していくために、小さな組織ですが取り組んでまいります。

2020年6月
特定非営利活動法人オープンソースソフトウェア協会
会長
橋本明彦

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